東部医学会講演会受講記
- 富井明望
- 2019年8月30日
- 読了時間: 2分
去る8/24当御殿場医師会斉藤昌一先生が会長を務める東部医学会の講演会に出席した。逆流性食道炎、パーキンソン氏病などのトレンドな治療に2演題のあと、ついに時の大研究者、大学者の登場でした。
高名な慶応岡野先生の講演があると噂されていましたが、まさしくそのとおりであると実感しました。
理科が得意で、中学時代すでに同級生とよく数学の原理や相対性理論をディスカッションしていた岡野栄之先生は1977年慶応医学部に入学してからすぐに微生物教室にて、がん遺伝子の分子生物学の研究を始めていました。またがんだけではなくさまざまな疾患に対しても分子生物学によって解明していけるかとのお考えがあったようです。ご卒業してからすぐに慶応生理学教室に入り、著名な御子柴克彦先生の門下に入り、分子生物学の手法で研究する神経生理学を生涯の専門とされました。
阪大をへて、神経にかかわる遺伝子のすべてを究明するため、ジュンズホポキンズ大学に留学されてからついに遺伝子の制御機能をもつムサシという特殊のタンパクを発見し、超一流科学雑誌であるネイチャーに世界初めて発表されました。
帰国後東大医科研を経て、1994年弱冠35歳で筑波大学の分子神経生物学の教授に就任されました。(当時、自分はまだ研修医で病室、手術室で眠れない日々を送っていました) その後1997年に阪大教授、2001年慶応の教授に就任されて、これら日本の分子生物学の最先端である研究施設でムサシから神経の再生を担ぐ神経桿細胞の存在を発見し、そこから神経ES細胞、さらにIPS細胞などを用いて不可能と言われてきたさまざまの難病の治療への挑戦を大勢の若い研究者たちを統率し、邁進されています。
講演の前半はかなり難解な神経幹細胞の基本と解析、研究方法でしたが、後半はES細胞とiPS細胞を用いた神経再生技術による脊髄損傷、脳血管障害、パーキンソン、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療について話されました。最後にiPS細胞を用いた新薬の創薬について、その革命性、経済性などについても話されました。その内容を詳細に列挙するのは困難で、比較的簡単に概要を知りたい方は、岩波書店から出版された岩波科学ライブラリー246 岡野栄之著「脳をどう蘇られる」をご覧ください。
1時間しかない短い時間のなかで、日本における膨大な医学研究における現在世界の先端的な細胞、遺伝分子生物学研究を触れて、感無量でありました。
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