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中国の医療問題と社会問題

先日、市内の某病院が、家族が支払いをしない中国人重症患者を収容して非常に悩まされていることを聞ました。中国ではこのような診療受け逃げを防ぐため、まず最初から高額な保証金を受け取ることが常識です。このように最近中国では、日本では常識では考えられないような多くの医療事件が報道されています。

 まずその一つは、今年4月12日河南省で21歳の大学生が亡くなった事件です。この大学生の名前は魏則西さん、サラリーマンの両親を持つ一人っ子で、2014年に滑膜肉腫と診断されました。さまざまな放射線療法や化学療法を受けても良くならないので、自らネット上中国最大の検索エンジンで、日本支社もあるBAIDU(百度)から推奨されている人気第一位の国営の解放軍の医療施設:武装警察北京総隊第二病院の腫瘍バイオセンター(腫瘤生物中心)を見つけ、そこで実施しているいわゆる「腫瘤生物免疫療法(DC-CIK)」を受けることにしました。同院を受診した際、担当医師などからこの治療法はアメリカのスタンフォード大学とコラボして開発したもので、有効率は80%以上であると再三吹聴されました。しかも、日本円で500万円以上の費用を支払わされたのに全く効果がなく、ついに今年4月肺転移で死亡してしまいました。

 この死亡事件は、故人本人がSNS(Wei Chart)にアップしたブログが発端で、数百万の転載や反響があり、瞬く間に社会中に拡散されたため、重大な社会問題になりました。中国や香港のメディアによると、DC-CIK療法は中国では治療の主要な方法とされていますが、それが開発された米国ではまだまだ臨床試験段階で治療手段としては依然不安定であり、効果も予想できないとされています。

 最終的に、当該軍病院には府や軍から監査が入り、問題の「バイオ免疫療法部」はなんと軍の自前の施設ではなく、高額に民間営利病院チェーンに名義を売り出していただけの施設であると摘発されました!つまり、軍病院は、自分の部門の名義を民間営利医療施設に売り出して収益を図りますが、民間病院は軍や国営の部門の信頼性を買ってそれを売りに利益を得るという構図が明らかになりました。このような日本では想像もできない、全く異常な医療システム或いは社会構造が中国のあらゆるところに存在します。

 さらに、この異常な社会構造が異常な医師VS患者関係を生み出しています。今「医患関係」という用語が毎日のように、ネット用語の上位ランキングの5位に顔を出しています。もちろんわが国にも診療ミスや医師と患者とのトラブルがありますが、中国とはスケールが違いすぎます。よく見られるのは、救急外来で患者が死亡したら、家族が納得しないため、町や部落の同族の連中数十名を一気に呼び出して、病院の受付を占拠し、医師、看護師や職員を殴打し、病院の施設を破壊して脅し、高額な賠償を要求するというケースです。その他、中国病院協会という組織の調査によると、多くの病院で週に1,2回暴力事件が発生しているということです。最近の例として、今年5月にも、医師が患者によって殺害される事件が3件起こっています。その中の5月5日の一件は医師が自宅まで尾行されて殺されるという報道まであります。そんな過酷な状況下で医療機関では低収入で少人数の医師や看護師が、連日多くのクレーマー患者と対応しなければならないという重圧で疲弊し、ますます態度は冷淡で傲慢になり、治療もいい加減になってしまい、患者の不満はさらに高まるという悪循環があります。

 一方では、逆に医療・福祉・医薬を食い物にする野心家、商人と政治家が横行しています。偽薬品や、偽健康食品は周知のことで一々枚挙しませんが、当然汚職も大量に発生しています。最も有名なのが、2007年に国家薬品監督局局長鄭氏が、700万元(約1億円以上)を収賄し、さらに薬品審査基準を改ざんし数種類の偽薬を許可したため、投与された患者が腎不全を起こしたことで死刑に処されました。その後もさまざまな収賄事件が発生して、その摘発によって最近ネットは衛生官僚或いは公立病院の院長たちが飛び降り自殺するなどの報道で賑わっています。ちなみに、共産党のトップである政治局員の一人ある周永康氏も汚職で摘発され、その金額は数億元以上にも上るといわれていますが、もちろん死刑にはなっていません。

 これらさまざまな問題が生み出されている中国の医療において、その問題の根源は殆ど制度によるものであるといわれています。社会全体の営利化、医療制度や、官僚の監督制度の不健全などが原因といわれていますが、もう一つ大きな負の影響を作り出した制度は一人っ子政策です。人口を制限するこの制度は反人類反人間的な独裁的なもので2人目や3人目が堕胎を強制されるだけでなく、生まれる最初の子も妊娠中に先天異常が検出されると堕胎が誘導されます。その先天異常を見落とした医師はまた訴えられるあるいは殺される対象になってしまいます。一昨年、やっと2人目を生むことが許されようになりましたが、逆に教育や住宅などの問題で2人目を望まない親が増えているといわれています。

 ますます経済力、軍事力で超大国になりつつある中国ですが、先日かつての駐日大使で現在外相に上った王毅氏が、カナダで記者を怒鳴ったような首脳の高圧的で傲慢な振る舞いの裏には、数千年の歴史の先例に違わず、数え切れないほどの罪のない人間の犠牲が隠されているのです。

 

*文中の魏西則氏がSNS(Wei Chart)にアップしたブログの小生の和訳です

長く考えましたが、やはり書くことに決めました。しかし必要のないトラブルを避けるため、例の病院や医師の名前を明らかにしないことにした。しかし、似たようなガンに患いている患者さんは自分が何を指しているかがわかるはずです。自分の答えが騙される方が少しでも減ることを期待したい。何しろ、ガン患者にとって、その代償があまりにも大きいから 大学二年のときに悪性腫瘍を見つけました。その後の治療は思い出したくない苦痛でした。手術、放射線、抗がん剤、生きているより死にたい気持ちでした。 自分は一人子でしたから、両親の愛情は本当に言葉で表せないほどです。自分たちの命を奉げだしても治療を受けさせたかったのですが、北京上海天津広州の全てのがんセンターには打つ手がないと言われ、両親はもう一人作ればと言われました。 BAIDU(百度)がいかに邪悪だったかは当時全然知りませんでした。医療情報の入札ランキングについても何も知りませんでした。そして、第一位にある武装警察病院のバイオ免疫療法や、DCCIKについて、すごくいいと書いていましたから、両親はすぐに病院に連絡を取って、数日内に上京しました。

李という部長と会いました。彼が話したのは、この技術は彼たちのものではなく、アメリカのスタンフォードが開発したもので、彼らとはコラボレーションしています。有効率は80~90%になるし、自分の検査結果をみて両親に20年保障しますと言ってくれました。この病院は国営の最高ランクの病院で、ネットでこの医師のことを調べましたが中央テレビCCTVにも招待されて10回以上出演したことがあります。BAIDU,最高ランク国営病院、中央テレビ、スタンフォードのテック、もう疑う余地がありませんでした。

家のお金が足りなくで、親戚や友人から借りて、全部で20万元以上払いましたが、結果は数ヶ月で肺に転移しました。当時は1~2ヶ月しか持たないといわれましたが、その後に分子標的薬を手にいれなかったら、本当に後がありませんでした。

父親はあの病院と医師を尋ねましたが、同じ病院で同じ外来で彼が言うことは全て、確率のことになりました。何も保障していませんと、また続けるように勧められました。もっとやれば効果がでるといわれました。

実際にあとで多くの友人を知り合って、アメリカに留学している方もいまして、調べてくれましたが、事実はこのテックは海外で有効率が低すぎるため、臨床の段階ですでに淘汰されているため、アメリカではこれを実用している医療機関がまったくありません。しかし、中国に持ってくると、最新の医療技術に変身し、さまざまな詐欺になっています。

今入院しています。なんとか信頼できる技術を見つけましたが、家には一文も残されていません。しかし、わずかな希望があれば生きて行きたい。両親の晩年に寂しさを残したくありません。また、こんなに沢山の人々が助けてくれていますから・・・」

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