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ニキビ

 専門的には、尋常性痤瘡といいます。毛穴(毛包)が慢性的に炎症を起こした状態です。10代の人の約8割には多少とも見られるもので、病気と言うよりも生理的な現症といえます。
 「青春のシンボル」といわれるように、健康な人にもできますので、心配なものではありませんが、若い人に多いことから美容的な意味から、必ずしも軽く扱うわけにはいきません。また、なおった後に、傷あと(瘢痕)を残すことがありますから後悔のないように専門家による適切な治療をお奨めします。

 

 

◆原因は?

 

  思春期になると性ホルモンの働きがさかんになりますが、中でも男性ホルモンのアンドロゲンは皮脂の分泌を増加させます。この時期に毛の穴が角質によってふさがれますと、出口を失った脂が毛包内にたまります。 普通の状態でも毛包はにきび菌のすみかになっていますが、この菌は脂を好みますし、脂でふさがれるとますます繁殖することになります。さらに、ニキビ菌が作り出す(リパーゼ)によって脂が分解されて炎症の原因となります。

 

◆悪化因子は?

 

 寝不足やストレスは、ほとんどの病気に共通する悪化因子です。女性では多くの場合、生理前に悪くなります。前髪の刺激によっておでこのニキビが悪くなることもありますし、化粧品によって悪化することもあります。

 

◆スキンケアは?

 

 汗や脂は、毛包を塞いで、ニキビの原因や悪化因子となりますので石鹸を使った洗顔を励行しましょう。洗顔料としては、汚れと共に皮脂を除去するが、皮膚の乾燥や落屑を防ぐために必要な角層細胞間脂質を取りすぎず刺激の少ないものが望まれます。効果的に洗顔する為に自分の皮膚にあった洗顔料を選ぶ必要があります。コールドクリーム、ファンデーション、乳液など油性の化粧品は使用をさしひかえた方が無難です。頬杖による手指による擦過や、前髪を垂らすとかヘアバンドでおでこを刺激するのも好ましくありません。 ニキビを指でつぶすと化膿したり傷跡を残したりします。食べ物は、脂肪分、糖分の過剰摂取により、毛包の刺激を促し悪化に働きます。環境の因子として、気温の上昇はニキビ菌の増殖を促します。季節や職場の温度環境も悪化の誘因となるので温度の調節をしたいものです。さらに便通を整え、精神的ストレスを避け、十分に睡眠をとることもスキンケアには大切です。

 

 

◆治療は?

 

 ニキビの治療の目標は、既にできてしまっているニキビを取り除くだけでなく、新しいニキビの発生を予防することも含まれます。ニキビの原因を考えても分かるように、①毛包の閉塞を防ぐ②菌の増殖を防ぐ③炎症をおさえることが治療の基本です。①に対しては硫黄を含んだローションがよく用いられます。②には、抗生物質のつけ薬や、のみ薬、特にテトラサイクリン系とマクロライド系の薬に効果があります。 ③には、サリチル酸等が用いられます。特に注意すべきことは、湿疹などの治療に使われる副腎皮質ホルモン外用剤(ステロイド剤)によりニキビは悪化します。

 

◆できやすい所は?

 

 毛包は、人の身体のほとんどの部位にありますが、ニキビのできる毛包は限られています。顔にできやすいことは言うまでもありませんが、年齢によって多少の違いがあります。10代ではおでこに多く、20から30代になると下あごの方に多くなります。その他、首、背中や胸の上の方にでることもめずらしくありません。これらの場所では、発達した脂の腺を持つ毛の穴(脂腺性毛包)があるからです。

 

◆間違えやすい病気は?

 

 ニキビに似た皮膚病がいくつかありますが、主なものは、①酒さ(しゅさ):軽いものはいわゆる「赤ら顔」で毛細血管の拡張が目立つ。進行するとニキビ様の丘疹(ぶつぶつ)を伴う。 中年以降の男性に多い。②脂漏性皮膚炎:髪の生え際、鼻のまわりにできやすい。鱗屑(ふけ様のもの)を伴った淡紅色の発疹。丘疹(ぶつぶつ)はできない。③顔面播種上粟粒性狼瘡:瞼にできやすい点がニキビと異なる。  丘疹主体。傷跡を残しやすい。④集簇性座瘡:ニキビより症状が激しく大型のものが、顔、くび、胸、肩などにできて治りにくい。

 

 

参考文献
日本臨床皮膚科医学会 にきびリーフレット
皮膚科プラクティス5スキンケアの実際 文光堂

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