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乾癬(かんせん)

 

 

 

◆乾癬とは?

 

 乾癬とは、皮膚が赤くなって盛り上がり表面に銀白色の魚の鱗或いは、雲母の様な鱗屑が厚ぼったく付着し乾燥してポロポロとはがれ落ちてくる病気です。中国では銀色の鱗のようになるので「銀鱗病」と呼ばれています。ウイルスや細菌、真菌(かび)によるものではないので、まわりにうつる心配は全くありません。しかし、この病気の原因は、今のところまだはっきりわかってないので根本的な治療法が無く、悪くなったり良くなったりすることを繰り返す経過の長い慢性の病気です。日本には約10万人の乾癬の患者さんがいると考えられています。男の人が女の人の約2倍多くて、主に30歳から40歳代に発病します。女の人では、10歳代と50歳代の発病が多いともいわれています。
 

◆発疹ができやすいところ

 

 乾癬はこすったり傷つけたりする刺激が加わると新しい発疹ができてくる傾向があります。これをケブネル現象と呼びます。したがってはじめて発疹に気がつく場所としては、ひじ、ひざ、尻、頭などのこすれやすいところがあげられます。いくらシャンプーしても良くならないひどいフケ症だと思っていて、そのうちに身体や腕に赤い斑点ができ乾癬とわかることもあります。
 爪にも病気が出て白く濁って厚ぼったくなり、ポロポロとくずれやすくなります。これは、爪に水虫をおこす白癬菌というカビが入ったときの爪水虫にとてもよく似ています。

 

◆乾癬がおこる原因は?

 

 乾癬の起こる原因はまだはっきりとわかっていませんが、現在では自己免疫疾患であると考えられています。家族に乾癬が見つかることから遺伝が関係している様ですが、日本での調査では、家族内発症は5%とそう高くありません。ですから、乾癬をおこしやすい体質を持っていても、必ずしも病気が起こってくるとは限らないのです。遺伝的な要素以外にいろいろな外的因子(ストレス、風邪などの感染症、薬物、外傷など)や内的因子(肝臓病、糖尿病など)が、乾癬をおこしやすい体質に加わって病気として発症したり悪化したりするものと考えられています。
 生活環境の良い欧米の先進国に多く50人に1人の割で患者さんがみつかり、日本では、戦前から戦後には少なく、生活様式の欧米化、環境の変化と共に患者数が年々増えてきました。このことからも、欧米型の食生活、特にコレステロールが関与しているともいわれます。

 

◆乾癬の種類

 

 発疹の現れ方や合併のある他の症状などから、乾癬はいろいろなタイプに分けられます。

 ① 尋常性乾癬
   ごく普通の乾癬で90%近くがこのタイプです。

 ② 膿疱性乾癬
   表面にうみをもつ膿疱(全く微生物の見つからない無菌性膿疱)が沢山できて、

   発熱などの症状があるものです。
 ③ 乾癬性紅皮症
   発疹が全身に広がって、身体全体が赤くなるものです。
 ④ 関節症性乾癬
   手足の指や背骨などの関節がおかされて変形するものです。
 ⑤ 滴状乾癬
   のどが痛くなって発熱した後にしずく状の小さい(大豆程度)発疹が出るもの

   です。この他仲間の病気として手のひらや足の裏が赤くなり、膿がぽつぽつと

   出てきて皮膚が。むけてくるという掌蹠膿疱症という病気があります。

 

◆乾癬はうつりません

 

 乾癬が周りの人にうつることはありません。皮膚がかさかさとはがれ落ちて床や浴槽を汚すと、うつるのではないかと心配する家族の人もいるかも知れません。時には、膿疱という膿をもつ発疹も出てきますが、ウィルスや細菌、カビなどによっておこっているのでないので、決してうつることはありません。
 

◆乾癬の治療は?

 

 乾癬の治療法には次のようなものがあります。外用療法、(ぬり薬)、内服療法(のみ薬)、光線療法などですが、これを単独或いは併用で用いていきます。具体的な治療は、各々の症状や経過から決められていきます。各々の療法にはそれなりに副作用がありますから、定期的に医師の診察を受けその指示をしっかり守って下さい。決して自分で勝手に治療メニューを決めてしまわないようにしましょう。 
 経過が長い病気ですから乾癬を目の敵にせず、焦らず病気と長く付き合っていく気持ちが大切です。

 

◆日常生活の注意

 

 ① 食事
  高脂血症の改善と共に皮疹の改善を見る例もあります。肉類や脂肪分の多い食事は

  とりすぎないようにしましょう。獣肉に比べて魚肉にはアラキドン酸が多くこの代

  謝産物には強い起炎性活性が無く有効という報告もあります。また、アルコール、

  タバコは乾癬には良くない事が知られています。
 

 ② 日光浴は乾癬によい
  日光照射量の少ない北国では乾癬は治りにくいといわれています。日光浴だけでも

  乾癬がかなりよくなる場合があるので治療法の1つになっています。但し、急な日

  焼けはかえってケブナー現象を引き起こし悪化してしまうので注意しましょう。
 

 ③ 風邪
  風邪などの感染症で乾癬が悪化し易くなります。風邪をひかないように又、こじら

  せないように健康管理と、予防のためのうがいをよくしましょう。
 

 ④ 入浴はこまめに、ただし皮膚の刺激を避けましょう
  皮膚を清潔に保つことも悪化を防ぐのに必要です。ただしゴシゴシとこすりすぎ

  ないように入浴後にはやさしく身体をふいて直ぐ塗り薬を塗るようにしましょう。

  さらに肘や膝のようによくこすれる部位は再発しやすいし、治りにくいところで

  す。皮膚に刺激の少ない素材のゆったりとした衣服を着るようにして下さい。
 

 ⑤ ストレス

  精神的なストレスで乾癬は悪化します。ストレスをためないように独自の解決法を見つけて気分転換をできるように努力して下さい。
 

参考文献:日本臨床皮膚科医学会監修「乾癬」リーフレット
「皮膚の医学」田上八朗著 中公新書

 

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