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息切れを見過ごさないで!!

 「最近何となく風邪が直りにくいし、咳がでやすくて息切れがしやすいなぁ。それになんでこんなに一日中眠いのかな?」
「たばこを吸っていた?」
 「そう言えばつい最近まで吸ってました。まあ、女房と娘が煩いので去年やめてみましたが、やはり古い友人が訪ねてきたら1本や2本ぐらいは吸わなくちゃ・・・」

 

 

◆COPDって何?

 

冒頭の話は、どこかでよく聞かれる会話です。実はこれ、典型的な慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状なのです。
 慢性閉塞性肺疾患は「たばこ病」といわれています。喫煙(90%)及びその他の原因(排気ガスなど10%)によって、気管支の炎症と肺胞の壁が破壊されているため、酸素と二酸化炭素の交換ができなくなった病気です。
 実はCOPDは慢性気管支炎や肺気腫などの病気と同じです。現代の医学研究で慢性気管支炎と肺気腫はその本質は同様に気管支や肺胞の壁の破壊であることが解ったため、一つの範疇にまとめました。
 先に言った症状のある方はたとえ最近2,3年前にたばこをやめても今までの喫煙の量で、年数×1日の本数が800を越えたら、COPDにかかる確率が高くなります。(もちろん食道癌や肺癌、喉頭癌にかかる確率も高くなります。)
 また、COPDは遺伝性が比較的高いので、父親が肺気腫になっていると、お子さんも喫煙している場合は年を取ると確実に発症します。

 

COPD症例のレントゲン写真

70才代 男性 

80才代 女性

◆COPDが進行するとどうなるの?

 

 まず、肺が役に立たなくなることで、息切れが強くり、夜は平らに寝れなくなったり、自宅の2階へ登れなくなってしまいます。また、血液の中の酸素が著しく低下するため、心臓や脳の機能低下、記憶力の低下、ボケになりやすくなるといった症状があります。心臓では体内の酸素が低いと心臓の血管がけいれんを起こしやすくなり、心筋梗塞や狭心症等になりやすくなります。

 

 

◆どうすればCOPDかどうか分かるの?

 

 つまりCOPDの診断はどのようにするかについてですが、病院で胸部レントゲン写真撮影、呼吸機能検査と血液ガス検査などを受けてもらうとはっきり診断がつきます。
 胸部のレントゲンで、肺が正常な人より遙かに透過性が高い、つまり肺の紋様があまりみれられないことと、横隔膜が平坦であり心臓が小さくて水滴のような状態にみられるなどが肺気腫やCOPDの典型的な所見であるといわれています。
 画像でもっと診断に役に立つのはHRCTという断層撮影装置ですが、高価な機器ですので、あまり設置されていません。
 呼吸機能検査はスパイローメートレーという機械を使って行います。呼吸機能の中で1秒率という値を測定し、その結果が70%以下という数値であれば、確実に診断できます。
 また、患者さんが手軽に自分の呼吸状態をチエックするために、ピークフローメーターという器具があります。(実物)COPDに罹ってもその程度が軽い場合はまだ安心できます。しかし、程度については患者自身が判断するだけではなく、血液中の酸素の濃度(やや語弊があります)が主な判断条件になります。
 血液の中の酸素の測定方法は多種多様で、一番確実なのは動脈から直接血液を採取して、酸素の含有量を測定する血液ガス分析方法であります。当院のように血液ガス測定設備が備えられている医療施設では10分前後で結果が出ます。
 もう一つ比較的間接的な方法ですが、手の指にプローブをはさんで測定を行う経皮的酸素飽和度検査があります。最大なメリットは簡単でどこでも気楽に測定できることですが、測定に得られた値は誤差が大きく、実際の酸素濃度とはかなり離れています。また肺機能のもう一つ重要な指標である二酸化炭素を測定できません。

 

 

◆COPDの具体的な治療法は?

 

 COPDの治療はまず禁煙から始めます。禁煙しないでCOPDを治したいのは全く可笑しい話です。
 治療は呼吸訓練や内服療法があります。内服薬には硬くなって潰れている気管を広げる気管支拡張剤、潰れている気管の中にたまっている痰を取り除く去痰剤、気管や肺全体の炎症を抑える副腎皮質ホルモン-つまりステロイド等があります。また、内服薬が全身に渉って惹き起こす副作用を避けるために吸入剤になっている薬剤があります。例えば気管支拡張剤、ステロイドなどは吸入ができます。
 では、実際肺機能が70%以下に落ち込んでいて、また、確実に息切れが強く、血液ガスなどの検査で低酸素状態が確認されたら、唯一の治療方法は酸素の吸入であります。もし年齢的に50歳代で、まだ社会的に活躍しなければならない状態であるなら、欧米では肺移植が治療の主流になります。しかし、これはコストが高い、さらに提供者が少ないため、日本ではあまり実施されていません。
 肺機能が低下して酸素が離さない状態になった場合は身体障害者の認定が受けられ、医療費に減免やいろいろ福祉上の優遇処置が受けられます。当院の院長と名誉院長は県指定呼吸器専門認定医でありますので、いつでもご相談ください。
 最後に、冒頭の対話のような方がまだ、数多くいると思います。どこかで同じ様なことを言っているお知り合いがおられたら、是非禁煙を薦めた上で、当院の情報誌folioを渡してあげて、当院に受診するようにお勧めください。

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