0550-84-3322
ラテックスアレルギー
◆ラテックスアレルギーとは?
80年代後半から天然ゴム製品に対する即時型アレルギー反応が各国で報告されはじめ、ラテックスアレルギーと呼ばれるようになりました。原因となる天然ゴム製品は各種の医療器具から歯科材料・日用品と非常に多岐に渡っています。
このアレルギー反応の起こる危険の高いグループは天然ゴム製品に接触する機会の多い人です。特に職業的に天然ゴム製手袋を常用する医師や看護師では5~15%の人がIgE抗体陽性であるとも報告されています。
さらに、ゴム手袋に塗布されているパウダーやゴムタイヤの摩耗粉がラテックス抗原を伴って飛散していることから、こうした微粒子の吸入が重要な暴露経路の一つであると指摘されています。
症状としては、通常ラテックスゴム製品との接触後5~20分後に局所のかゆみ・膨疹がでる接触じんましんなど比較的軽いものが多いですが、全身性じんましんやアナフィラキシーショックに発展する場合もあり、アメリカでは死亡例が報告されています。
このアレルギーの原因となる物質の究明が各国で進められた結果、製造原料であるゴムの木の樹液(ラテックス)に含まれる複数のタンパク質及びそれらの変化体が最終製品にまで残存し、アレルゲン(アレルギーの原因)として作用することが明らかにされました。しかし、個々のアレルゲン蛋白の性質や生理的な役割についてはまだ十分に解明されているとは言えません。
ラテックスアレルギーの注目点として、天然ゴム製品だけでなくクリ・バナナ・アボガド・キウイなどの植物性食品や花粉・薬草に対してもしばしば即時型アレルギー反応を起こすことです。この現象は特に、ラテックス-フルーツ症候群と呼ばれています。
ラテックス-フルーツ症候群は、花粉症を伴う一連の食物アレルギー(花粉- 食物アレルギー症候群)と類似している点が多く、食物アレルギーの原因としては有名ではないような幅広い植物性食品が反応を誘発します。
花粉-食物アレルギー症候群の症状としては、新鮮な果物や野菜(リンゴ・モモ・サクランボ・ビワ・イチゴ・ナシ・メロン・スイカなど)を食した際に出現する、口腔・咽頭を中心としたアレルギー反応(口腔アレルギー症候群OAS)が特徴的です。しかし、ラテックス-フルーツ症候群に関しては、OASにとどまらず、全身性じんましんやアナフィラキシーショックに発展した例も多く報告されています。
こうした症候群で見られる幅広い交差反応は、動植物細胞に広く見られる蛋白質抗原(アレルゲン)が、IgE抗体に対する共通エピトープ(抗原決定基)を提示した際に出現すると理解されています。しかし、ラテックス-フルーツ症候群では原因となる植物が分類学的にはそれほど近縁種でないため、交差反応性抗原に対する具体的な説明はされていませんでした。
最近では、天然ゴム製品の安全性試験や患者診断法の確立に不可欠なラテックスアレルゲンに関する研究が進められています。そしてこの患者が様々な食品に対して交差反応性を示すという特徴と、ストレスの加わった植物に誘導される抵抗性蛋白には種によらない一定の構造類似性があると報告されていることを考え合わせ、「植物の生体防御タンパク質群がラテックスアレルゲンであり、交差反応性抗原(交差反応の原因)である」という仮説が提唱されています。
ラテックスアレルギーの治療と予防法としては次のように対応することが勧められます。
①パウダー付き手袋の使用をやめる
(重要な感作・誘発ルートの一つはアレルゲンの吸入)
②原因となる植物野菜を除去し、調理方法による違いを把握する。
(生のトマトで反応する患者さんでも、トマトジュースや
トマトケチャップでは、ほとんど反応しない等)
③医療機関で抗アレルギー薬や抗ヒスタミン剤等の内服治療を受ける。
◆ラテックス-フルーツ症候群を起こしやすい食物
① 高い交差反応性が報告されている食物
・バナナ、アボガド、キウイ、クリ:多数の報告がある。
・ジャガイモ、トマト:一部に報告がある。
② 中等度の交差反応性が指摘されている食物
・パパイア、パッションフルーツ、イチジク、マンゴー、パイナップル、
メロン、モモ、ネクタリン、リンゴ、ニンジン、ホウレンソウ
・シラカバ花粉、ブタクサ花粉、イネ科花粉、ヨモギ花粉
③ 低い交差反応性が指摘されている食物
・小麦、ライ麦、セロリ、プラム、サクランボ、アンズ、
ヘーゼルナッツ、アーモンド、イチゴ、クルミ、ピーナッツ、
ソバ、ピーマン、ブドウ、トウモロコシ
④ 交差反応の報告があるもの
・グアバ、魚、ヨウナシ、コショウ、
・ココナッツ、オレガノ、セージ、ディル、牛乳、ビーツ、ビワ、
・ワサビ、甲殻類、軟体動物、タケノコ、グレープフルーツ、スイカ、カンタローブ、大豆、カブ、マッシュルーム、
レタス、オレンジ、カラシ、ハッカ、ヒシ
参考文献:
ラテックスアレルギー~日本の現状と今後の展望~、
食物アレルギーの謎に迫る、皮膚アレルギーフロンティア 2004.9 Vol.2 No.3
ラテックスアレルギーと植物の生体防御タンパク質 、国立医薬品食品衛生研究所療品部