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イボ

 

 

◆イボはウィルスの感染症

 

 イボは、ウィルスが皮膚に感染して、皮膚の表皮細胞が勝手に増えだしてできる腫瘍の一種です。医学的に疣贅(ゆうぜい)と呼ばれ、ヒト乳頭腫(パピローマ)ウィルスの感染でできます。このパピローマウィルスには、1999年12月12日現在で83種の異なる型が知られており、その中でも、尋常性疣贅がありふれたイボです。表面が乳首のようにでこぼこして、ざらざらと乾燥した厚い角層がおおい1センチぐらいまで大きくなります。これが足の裏にできる足底疣贅は、よくウオノメと間違えられます。ウオノメは、刺激された部分だけ角層が厚くなり、乾燥して硬くなったものですが、足の裏のイボは乳頭腫ですので表面が細かくざらざらしており、所々に出血による黒い点々が見られます。その他、成人の顔や手に出やすい青年性扁平疣贅は、炎症反応後の自然消退がよく見られます。さらに、陰部に出やすい尖圭コンジローマは性病としてもうつります。これらのイボに共通する発症のきっかけは小外傷で、顔面、手足、膝や外陰部などに多く発症しやすいからだといわれています。

 

◆イボは自然に消える

 

 たいていのイボは子供の時に友達からうつり、たとえたくさんできても、いつの間にか消えてしまいます。不思議なことに、腫瘍であるのにイボだけは、自然に消えていくことが古くから知られていました。おまじないや、各地にある「イボ地蔵」にお参りしても良く治ります。そのため、世界中に古くから,イボを治す儀式や信仰がいろいろとあります。暗示や励ましによる積極的な気持ちの持ち方が、免疫反応を惹き起こし、腫瘍でも治す現象を惹き起こすことが可能であるということです。さらに興味深いのは、ある博士の分析では、この自然消退の免疫現象が大人より子供で治療効果が上がるのは当然として、女性より男性の方がこの現象が起こりやすいそうです。一般に女性の方が夢を持ちやすいように思えるのにむしろ治療を疑ってかかっており、実際には男性の方が、治療されていることへの夢をもっている、言い方を変えれば、男性の方がだまされやすいともいえるということだそうです。

 

◆自然に消えないイボ

 

 一方、世の中にはある種の微生物感染にだけは、免疫反応が起きないで治らないことがあります。その中には、ヒト乳頭腫ウィルスによる腫瘍には何の反応も起きない人が家族性に見られることがあります。この病気は疣贅状表皮発育異常症と呼ばれます。この患者さんでは、絶えず身体のどこかに扁平疣贅ができ続ける状態にもなります。また、臓器移植後の免疫抑制剤を投与されている患者さんや、細胞性免疫の低下するエイズの患者さんでも同様にイボが起こりやすくなります。また、免疫力の弱い人ではイボは消えずに残り、稀ですが悪性化、すなわち癌化が起こることがあります。このような場合は、特に発癌性のある紫外線の作用などが加わることが大きな要因になります。ともかく、成人で治らないイボがあれば皮膚科の専門医の診察を受けてみて下さい。

 

◆イボの治療

 

 数カ月以上治らず、大きくなったり数が増える場合は、治療の対象になります。イボの種類、部位、大きさや数などの症状により治療方針を立てますが、基本的に、イボの治療では手術的に切ることをしません。まずは、免疫現象を惹起するために刺激を与えたり、漢方薬の内服をしたりします。局所の処置としては、電気で軽く焼いたり液体窒素で凍結したりして、腫瘍を簡単に壊します。特に、凍結療法は、一度凍った細胞が解けて壊れ、細胞の腫瘍抗原が吸収されますので、あとの免疫反応を起こしやすくするはずだと言われています。

 

◆イボができてしまったら

 

1)ウィルス感染症であるので自分にひろげない、他人への感染に注意すること。
2)感染は、小外傷を通じて起こるので、ひげ剃りや掻破、手足の傷や荒れ、性行為感染症的性格(尖圭コンジローム)に注意すること
3)但し感染への過度の心配はしないこと、発症しても特殊な場合以外は必ず治癒する
4)現在、特効薬的治療法がないため医師により治療法が異なることがある。
5)一回の治療では治癒しないことが多く、根気強い治療が必要なこと

 

 

 

参考文献:
皮膚の医学 田上八朗著 中公新書
皮膚科診療プラクティス 10 宮地良樹、滝川雅浩編 文光堂

 

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